おさらい「年収の壁」

 前回「103万円の壁」について取り上げましたが、令和7年分から改正される「年収の壁」についておさらいしていきます。
 そもそも「年収の壁」とは、働いて得られる年収が、ある金額を超えると税金や社会保険の負担が増えるポイント(=壁)のことで、令和6年までの主な年収の「壁」は以下の4つです。
 ①103万円の壁(所得税)
年収103万円以下なら、所得税がかからず、配偶者の扶養にも入れる。
 ②106万円の壁(社会保険)
週20時間以上勤務、勤務期間が継続見込み、従業員数51人以上(2024年10月から)の企業などに当てはまる場合、年収106万円以上で社会保険加入義務が発生。
 ③130万円の壁(社会保険)
配偶者の扶養から外れ、自分で国民健康保険・国民年金または会社の社会保険に加入が必要に。
 ④150万円・201万円の壁(配偶者特別控除)
配偶者控除が段階的に減少していくライン。配偶者特別控除が受けられる配偶者の年収上限が201万円。配偶者の所得によって、控除額が変動。

 では令和7年税制改正で変わること、主要ポイント
 ※ 所得税の非課税ライン引き上げ103万円最大160万円相当
  ・給与所得控除(55万円→65万円・基礎控除(48万円→~95万円
 ※ 配偶者控除(配偶者の合計所得の要件48万円58万円
 ※ 配偶者特別控除(満額適用の範囲150万円160万円
 ※ 特定扶養控除(合計所得の要件48万円 58万円
 ※ 特定親族特別控除の創設(特定親族の年収123万円超188万円以下)

「扶養の範囲内に収めたい/収入を上げたい」など、働き方を探っている方へ、あくまでもざっくりイメージで改正後の壁がどう影響するかまとめてみました。配偶者の社会保険の扶養に入っている人は、130万円を超えると自分で国民健康保険+国民年金に加入することになり社会保険料の負担が発生するところは今まで通り注意点です。時短勤務の働き方の参考になれば幸いです。

年収 所得税・配偶者控除 社会保険加入 手取り額の傾向
備考
103万円以下 所得税なし、配偶者控除あり
(満額)
扶養内 手取り高め
税・社保とも免除。定番の「扶養内」ライン
106万円 所得税非課税枠に入りやすい
(※改正後)
※条件次第で社会保険加入あり 手取りがやや減る可能性
週20時間以上・従業員51人以上・勤務継続見込み等の条件を満たすと社保加入
120万円 所得税なしの可能性あり
(改正後)
扶養内 or 加入 条件次第
社会保険加入の有無で大きく変動
130万円 所得税なしまたは軽減
(改正後)
社会保険扶養の上限を超える → 自分で加入 手取りがぐっと減る
この壁を超えると社保料が発生。注意ライン
140万円 所得税発生(軽減あり) 社会保険加入必須 手取りが伸びにくい
働くほど手取りが増えにくくなる「逆転ゾーン」になる可能性
160万円 配偶者特別控除(満額)
上限ライン(改正後)
社保加入 手取りは回復傾向
社保料負担はあるが、年収が上がれば手取りも回復してくる
200万円 控除は徐々に減少、
所得税も増える
社保加入 手取りも増えるが税・社保の負担増
「壁を超えて働く」選択をすべきゾーン

 

「103万円の壁」どうなった?

令和6年末から話題となっていた「103万円の壁」、結局どうなったのでしょうか?
所得税の「103万円の壁」は、令和7年度より基礎控除額が最大で95万円に、給与所得控除の最低保障額が65万円となり、所得税のかからない「壁」は年収160万円に引き上げられます。合計所得が132万円以下(給与収入で200万円相当)の人はこの160万円の壁で減税されることになります。合計所得が132万円超の人は、年収に応じて基礎控除額が段階的に変わります。わかりにくいですが目安として給与収入200万円相当~2,545万円相当までの人は2万円~3万円程度の所得税減税となるようです。103万円の壁を気にして働いていた方にとっては、働き方を見直す良い機会ですが、
一定の年収を超えると社会保険への加入や住民税の課税も生じるため、手取りが減ってしまうこともあるのでやはり留意が必要です。103万円の壁見直し
年収
1月1日から12月31日までの1年間に会社から支払われる各種手当などを含む給与等の総支給額。
所得:税法上、収入から必要経費を差し引いたもの。
給与所得者の場合は「給与所得控除」を必要経費として差し引いたものが給与所得です。
合計所得金額:給与所得など各所得を合算したもの。その年の収入が給与所得のみの場合は給与所得が合計所得金額になります。

基礎控除の額基礎控除

給与所得控除の額給与所得控除

収入の壁 扶養範囲を確認しよう

一気に秋も深まり、そろそろ年末調整に必要な保険料控除証明の通知などが配達される季節です。結婚して扶養の範囲内で働くパート・アルバイト、例えば妻が夫の扶養の範囲内で働くケースではよく耳にする「103万円の壁」や「130万円の壁」など注意が必要な収入の壁が存在します。扶養控除には所得税や住民税、配偶者控除など税制上の扶養と、健康保険や年金に関する社会保険上の扶養があるので働き方に応じてどの壁に注意が必要か確認しておきましょう。
税制上の扶養控除の壁
100万円の壁100万円(自治体によっては93万円~100万円)を超えると住民税が課税されます。
103万円の壁103万円までは所得税が課税されません。ここを境に配偶者特別控除の150万円の壁・201万円の壁があります。以下のチャートを参考に確認してみましょう。

社会保険上の扶養の壁
130万円の壁 妻の収入が130万円以上(60歳以上は180万円以上)になると夫の社会保険の扶養から外れ、一定条件のもと社会保険料を妻本人が支払うことになります。
106万円の壁 以下の条件にすべて該当する場合も社会保険の扶養範囲から外れ保険料の支払いが発生します。妻が大企業でパート勤めをしているケースなどが該当しますが年金制度改正により、今後、右下表のように対象となる企業の従業員数が引き下げられ対象者が拡大することになります。
妻の収入が103万円以下であっても、例えば生命保険の一時金や、株・FX取引、転売収入など給与以外に一定の収入があれば一時所得や雑所得として課税対象となるケースがあり「103万円の壁」を超えることもあるため注意が必要です。

令和2年分の年末調整から変更!所得税制改正ポイント 

年末調整の申告書が大幅に変わります
所得税基礎控除の改正、所得金額調整控除の新設に伴い「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」 という3つの申告書が1枚の用紙になっています。主な変更点をご案内します。

給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書

給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を1律10万円引き下げ、基礎控除の控除額が10万円引き上げられました。

・給与等の年収が850万円以下で、他に収入がない人にとっては、改正後も税額の影響はありません。

・年収850万円を超える人については、給与所得控除額の上限が195万円に引き下げられるため増税となり、さらに合計所得金額が2,400万円を超える人については基礎控除も逓減されるので、さらなる増額改正となっています。

所得金額調整控除の新設
給与年収が850万円を超える人についてのみ、以下のいずれかに該当すれば、給与所得控除に上乗せして、所得金額調整控除を給与所得から控除することができます。
イ) 本人が特別障害者に該当する者
ロ) 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
ハ) 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者

所得金額調整控除額={給与等の収入金額(又は1,000万円のいずれか少ない額)- 850万円}×10%

ひとり親控除の新設
婚姻歴や性別にかかわらず以下の「ひとり親」の要件に該当する場合は、一律35万円の控除を受けることができます。
1) 生計を一にする子(扶養親族となる子に限る)がいること。
2) 合計所得金額が500万円以下であること。
3) 内縁関係を含む配偶者がいないこと。

寡婦控除の見直し
ひとり親控除に該当しない寡婦には引き続き寡婦控除27万円が控除されます。子以外の扶養親族を有する寡婦の寡婦控除適用要件に以下が追加されました。
1) 合計所得金額が500万円以下であること。
2) 内縁関係を含む配偶者がいないこと。

寡婦控除・ひとり親控除額

給与等の収入金額(850万円以下か超か)、配偶者や扶養者の有無、所得金額調整控除の適用の有無で提出が必要な申告書が変わってきますので注意しましょう。